Peppol はじめの一歩

この記事では、「デジタルインボイスを送信するには、具体的になにをすればいいのか?」を説明します。主たる読者として Peppolの使用を検討されているシステムインテグレーター、サービスプロバイダーのエンジニアを想定しています。デジタルインボイスなどのドキュメント送受信サービスの開発を検討されている方は、ぜひ参考にしてください。


「Peppolでデジタルインボイスを送ろう!」などといきなり言われると身構えてしまいますが、このブログを読めば、「デジタルインボイスは、思ったより簡単に送れる」のだと知っていいただけるはずです。

正確性を欠く例えですが、「Eメールに請求書のPDFを添付して、取引先に送る機能を実装する」のとそれほど難易度は変わりません。「それならEメールでよいのでは?」と思われるかもしれませんが、Peppol には次のとおりEメールに成し得ない特徴があります。

一つは、デジタルインボイスは構造化されたデータであり、それが共通仕様であることです。OCRやマニュアルオペレーションを介さずに請求データをシステムにインポートできるのです。

もう一つの特徴は、取引先がPeppol ネットワークに参加しているなら(Peppol を採用したドキュメント交換サービスを利用されているなら)、送信側と受信側の事業者で全く異なるシステムやサービスを採用していたとしても、お互いにドキュメントの送受信が行えるということです。これは日本のみならず、海外の企業も対象となりえます。つまり世界中の企業と、同様のプロトコル(手続き)でドキュメント交換できるということです。

先に Peppol をEメールに例えました。次は、Eメールの請求書送信フローに必要な諸要素が、Peppol のいずれのキーワードと対応しているか説明します。

メールアドレス → Peppol ID

Peppol ID というものがあり、電子インボイス送信時はこれを宛先として指定します。日本では「法人番号」と「適格請求発行書事業者登録番号」の両方(あるいはどちらか一方)を Peppol IDとして用いるのが一般的です。

なお、ID(識別子)というわりに、「両方」あるいは「どちらか一方」のような曖昧な記述に疑問を持たれるかもしれません。これについては別の記事にて解説しています。

Peppol IDを理解する【前編】

メールの添付ファイル(PDF) → XML形式のファイル(JP PINT)

JP PINT という仕様に従ったドキュメントファイルが、Peppol ネットワークにて送受信されます。JP PINTとは、デジタルインボイスを含む企業間取引データを表すための我が国の仕様であり、その実態は XMLファイルです。

メールサーバー(Eメールサービスプロバイダー) → アクセスポイント

Peppolでは、メールサーバーでなく、アクセスポイントに依頼しドキュメントの送受信を行います。アクセスポイントとは、デジタルインボイス送受信の主体となる法人・事業主の代わりに、実際にドキュメントの送信・受信を行う専門の業者のことです。

アクセスポイントは、各国のPeppol Authority の認証を取得した正規のサービスプロバイダーでもあります。日本であればデジタル庁が Peppol Authorityを担っています。

以上をふまえ実際にドキュメントを送るまでに開発者の実装すべき機能(実現すべき手続き)の概要を説明します。

(1) 送信者のPeppol IDの確認・登録

まずはドキュメント送信の主体たる事業者(主に法人)の Peppol IDを確認・登録しましょう。前述の通りこのIDは、メールアドレスと同じ役割を果たし、送受信の際の宛先となります。またPeppol IDは、一般的に法人番号(あるいはそれに準ずる何かしらの事業者識別番号)と一致します。加えて2023年10月より開始予定の「適格請求書」を送信したい場合、「適格請求書発行事業者登録番号」と一致する Peppol IDも必要となります。

なお「Peppol ID の登録とは、具体的どうすればいいのか?」と疑問に思われるはずです。その詳細は別記事にて解説させていただく予定です。本記事の目標「デジタルインボイスを送信する」だけであれば、とりあえずは送信者のPeppol IDを確認するだけで十分です。すなわち「送信者の法人番号を確認しておく」ということです。

(2) 宛先(受信者)のPeppol IDを確認する

Peppol Directoryを用いて、取引先のIDを確認します。すでにPeppol ネットワークに参加している企業であれば、その宛先となるPeppol IDをDirectoryにて確認できます。法人名で検索することもできますし、法人番号を用いて検索することもできます。この記事執筆の時点(2023年5月)では、日本の参加企業はほぼいませんが、各国の参加企業を確認することはできます。

注意点が二つほど。Peppol Directoryにはテストネットワーク用のディレクトリ、その名も Peppol Directory [TEST] が存在します。両WEBサイトの見た目がほぼ同じなので、混同しないようにしましょう。またこれらの Directory に登録された Peppol IDを宛先に指定すれば、本当に相手まで届きます。Peppol ネットワークを試す際は、ご自身で用意した テストネットワーク用の IDを宛先にすることが求められます。

(3) JP PINTのファイルを作成する

デジタルインボイスとして、請求データの出力ファイルを作成します。ファイルは JP PINTの仕様に従いフォーマットされている必要があります。前述の送信者と宛先(受信者)の Peppol IDもファイル内に記述されます。

JP PINTは、日本におけるデジタルインボイスの標準仕様であり、デジタル庁にて公開されています。詳細は、デジタル庁のサイトをご参照ください。

JP PINT(デジタル庁)

(4) デジタルインボイス送信する

デジタルインボイスのファイルをアクセスポイントに渡して送信の依頼を行えば、アクセスポイントが取引先の企業に送信します。より正確には、「送信側のアクセスポイント」が「受信側のアクセスポイント」にドキュメントを送り、その「受信側のアクセスポイント」が「取引先企業」にドキュメントを渡します。

以上の手続きは、アクセスポイントを介して行う必要があり、そのインタフェース(手続きのやり方、依頼方法)は、アクセスポイントにより異なります。

Peppol アクセスポイントサービスのひとつ「Storecove API」であれば、RestfulなAPIを介してドキュメント送信までの手続きを行なえます。Storecove APIの特徴は、シンプルかつ開発者フレンドリーであることです。Webにおいて馴染みのある JSON フォーマットで請求データを渡していただければ、そのデータを JP PINTに自動で変換した上で取引先に送信いたします。反対に取引先からドキュメントを受信した際も、JP PINT を同様のJSONにフォーマットに変換した上でお渡ししますし、もちろん本来の受領フォーマットであるJP PINT  ファイルも併せて受信いただけます。

日本に限らず、Storecove APIは世界中のフォーマットに対応しています。つまり国内と同様の手続き(JSONフォーマット)のまま、海外企業とデジタルインボイスの送受信を行うことができるのです。

Storecove APIは、無料でご試用いただけるサンドボックスもございます。その気になれば、Peppol によるデジタルインボイスのテスト送信を数時間で試すこともできます。

デモのご要望やご質問等は、こちらからお問い合わせください。

Storecove ホームページ


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